伝統の…
江戸安永年間(一七七二~七八)、諸大名が公卿や将軍家に献上した上菓子を扱った誇り高き上菓子仲間だった初代から現在の五代まで、この店の当主は独自の創意を菓子のうえに重ねてきたわけである。
現在は茶席の菓子はもちろんだが、深蒸し茶にあうような祝い事や土産用の菓子も多い。
いずれも、現代感覚を取り入れた新作に、毎年意欲を燃やしている。
胡蝶
うらうらと照る春の陽のなかを舞い踊る蝶の姿はまことにのどかなもの。
蝶はその姿のしなやかさ、舞い踊るさまの可憐さからか、寒さに閉ざされがちだった心を和ませる。
外郎皮で白餡を包み、折り畳んだ形は、蝶がしばし羽を休めているようである。
(鶴屋吉信)
菜花の月・早蕨
菜花の月は黄色に染めた煎餅。
味噌餡をはさんで春の野辺の朧月を連想させる。
取り合わせは緑色の州浜製で、芽ぶいたばかりの蕨をかたどったもの。
(亀屋伊織)